むぅのほのぼのびより

短編小説、ゲーム攻略

star 人気RSS

google.com, pub-2656301591995340, DIRECT, f08c47fec0942fa0

【灯りの消えた窓辺で】短編小説

time 2025/08/30

【灯りの消えた窓辺で】短編小説

彼の名前は蒼(あお)。彼女の名前は灯(ともり)。 二人は、同じアパートの向かいの部屋に住んでいた。窓越しに見えるだけの関係。言葉を交わしたことはなかったけれど、互いの存在は、いつしか日々の一部になっていた。
蒼は夜型の画家だった。静かな時間にだけ筆が進む彼は、毎晩遅くまで窓辺で絵を描いていた。灯は朝型の詩人。早朝、まだ空が薄暗い頃に窓辺でノートを広げ、言葉を紡いでいた。
二人の生活は交わらないはずだった。けれど、ある日を境に、灯の窓に灯りがつかなくなった。蒼は気づいた。毎朝見えていた彼女の姿が、突然消えたことに。
心配になった蒼は、初めて彼女の部屋の前まで足を運んだ。けれど、扉は静かに閉ざされていた。何もできずに戻った彼は、彼女の窓に向かって一枚の絵を飾った。朝焼けの空に、詩のような言葉を添えて。
「君の言葉が、僕の絵に色をくれた。」
それから数日後、灯の窓に灯りが戻った。そして、窓辺に一枚の紙が貼られていた。そこには、彼の絵に応えるような詩が書かれていた。
「君の色が、私の言葉に命をくれた。」
それから二人は、窓越しに絵と詩で会話を始めた。言葉を交わさずとも、互いの心は確かに通じていた。季節が巡るごとに、窓辺の作品は増えていった。
やがて、ある春の朝。灯の窓が静かに開いた。そこには、彼女自身が立っていた。微笑みながら、手に一冊の詩集を持って。
「あなたの絵が、私に勇気をくれたの。」
蒼は何も言わず、ただ頷いた。そして、彼の窓も初めて開いた。二人の距離は、もう窓一枚分ではなかった。

google.com, pub-2656301591995340, DIRECT, f08c47fec0942fa0

star 人気RSS

down

コメントする




CAPTCHA





google.com, pub-2656301591995340, DIRECT, f08c47fec0942fa0

google.com, pub-2656301591995340, DIRECT, f08c47fec0942fa0











google.com, pub-2656301591995340, DIRECT, f08c47fec0942fa0