2025/07/22

陽菜(ひな)は、大学のキャンパスから少し離れた喫茶店でアルバイトをしていた。彼女の仕事場は木漏れ日の中、静かに賑わう場所で、時々心の休憩にもなる大好きな空間だった。ある日、初めての客ではないけれど、見覚えのある人物が目に止まった。圭介(けいすけ)――彼は同じ大学の文学部で、授業で何度か隣に座ったことがある。喫茶店での会話はいつも少し緊張するものだったけれど、その日は特に印象的だった。
圭介は陽菜に「ここで働いているなんて知らなかった」と驚いた表情で言った。その日の仕事の最後には、彼はメモに「楽しい時間をありがとう。君の笑顔に救われた」と書かれた小さなメッセージを残していった。
それをきっかけに、圭介は喫茶店の常連となり、毎回陽菜との会話を楽しむようになった。二人はコーヒーの香りに包まれた日々を少しずつ共有していく。陽菜が店の静寂の中、創作ノートを開く姿を見た圭介は「いつかその作品を見せてくれない?」と問いかけた。彼女は恥ずかしそうに「まだ途中だけど」と答えつつ、自分の夢を語り始める。
ある日、陽菜が圭介を待つ時間に、突然の雨が降り始めた。彼は傘も持たずに店に駆け込んできた。そして彼が渡してきたものは、彼が陽菜に内緒で書いていた短編小説だった。なんとその作品は彼女のアルバイト生活をモデルにしたもので、心温まる友情と、ひそかに芽生えた恋の物語が描かれていたのだ。
二人の距離はさらに縮まり、ついに圭介が「夏祭りの日、一緒に行かない?」と誘った。陽菜はその誘いを喜んで受け、祭りの日には彼が手を握り締めながら、「君のことが好きだ」と告白した。
その告白は、彼女の胸に確かな幸せをもたらした。そして数年後、二人は文学部での学びを活かし、一緒に小説を書く夢を実現させた。