【向日葵の記憶】短編小説

夏の終わり、ひまわり畑で出会った二人の恋の物語。

陽葵（ひまり）は、小さな町の図書館に勤める静かな女性。幼い頃からひまわりが大好きで、庭には毎年たくさんのひまわりを咲かせていた。一方、蒼介（そうすけ）は都会での生活に疲れ、祖父の家があるこの町へしばらく滞在することにした青年。

ある日、蒼介は偶然立ち寄った図書館で陽葵と出会い、彼女がひまわり畑に通っていることを知る。興味を持った彼は、陽葵の案内で広大なひまわり畑を訪れる。風に揺れる黄色の海に囲まれながら、陽葵は「ひまわりの花言葉、知ってる？」と微笑む。「それは『あなただけを見つめる』――」

蒼介は、ひまわりと陽葵の優しい雰囲気に魅了され、毎日のように彼女と過ごすようになる。しかし、都会での生活に戻らなければならない日が迫り、二人の時間は限られていた。

やがて、ひまわり畑で最後の夕陽を見つめながら、陽葵は蒼介に小さな紙切れを渡す。それは一枚のひまわりの種を包んだ手紙。「この種を持っていて。どこへ行っても、ひまわりがあなたを思い出させてくれるから――。」

都会へ戻った蒼介は、陽葵との時間を思い出すたびに、手紙をそっと開く。そして一年後、再び彼女の町へ足を運んだ時、ひまわり畑の真ん中で、変わらぬ笑顔で彼を迎える陽葵がいた――。