2025/07/22

第1章:推しという名の救い
大学2年の心晴(こはる)は、都会の喧騒に少し疲れていた。
講義に遅刻し、バイトとレポートに追われる毎日。そんな彼女の癒しは、アイドルグループ「Celestia」のメンバー、瑛翔(えいと)だった。
彼のキラキラした笑顔、ダンスの完成度、ファンへの優しい言葉。
「推しは、息する理由…!」
心晴はそう本気で思っていた。
グッズを集め、現場に行き、SNSで布教する日々。
でも、どこかで「絶対に届かない存在」とも感じていた。
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第2章:夢のような偶然
夏のある日、心晴は友人に誘われて都内の小さなカフェに入った。
そのカフェの奥の席に——見覚えのある横顔。
そう、そこにいたのは瑛翔だった。
「……えっ、本物!?」と叫びそうになるのを必死にこらえ、トレーを落とすほど動揺した。
実は、瑛翔は撮影の合間に偶然カフェに立ち寄っていただけだった。
そのとき、心晴のスマホがテーブルから落ちて、画面に表示されていたのは「Celestia」のライブ映像。
それに気づいた瑛翔が言った。
「……ファンですか?」
震える声で「大ファンです」と伝えた心晴に、彼は笑ってこう言った。
「よかったら、おすすめメニュー教えてください」
ただのファンとの偶然の会話だった——はずなのに。
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第3章:再会は、本当の奇跡
その日以降、心晴はカフェに何度か足を運んだ。
まさか再び会えるわけ…と思っていたら、ある日、また彼は現れた。しかも、先に声をかけてきた。
「前におすすめしてくれた紅茶、すごく気に入ったんです」
そこから始まった、小さな会話の積み重ね。アイドルとファン。ステージと客席。
決して交わることのないはずだった距離が、少しずつ縮まっていった。
ある日、瑛翔がぽつりと言った。
「僕も、誰か一人の支えになれてるなら——この仕事やっててよかったって思える」
その「誰か」は、もしかして私——?
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第4章:告白のタイミング
グループ活動が多忙になる中でも、瑛翔はカフェに顔を出し続けた。
誰にも気づかれず、心晴とのやりとりだけが、そこにはあった。
そして迎えた、Celestiaの全国ツアー最終日。
心晴は客席からステージの彼を見つめた。遠い存在。でも、目が合った瞬間——
彼は微笑んだ。その笑顔は、ファンに向けてではなく、たった一人へ向けたもののようだった。
終演後、彼から連絡が来た。
「心晴さん、話したいことがあります。よかったら少しだけ、時間ください」
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第5章:光の中で
静かな夜の公園。瑛翔は目を伏せながら言った。
「君の言葉が、ずっと支えだった。芸能界で自分を見失いそうになった時も——
なのに、君は僕を見つけてくれた。……僕も、君を見つけてた」
そして、勇気を振り絞るように続けた。
「もしアイドルじゃなかったら、もっと普通に会えてたかな。でも今の僕で、君に伝えたい。君のことが、好きです」
心晴の目から涙がこぼれた。
「こんな奇跡が、本当にあるんだね…」
月光の下で、二人は手を取り合った。
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💫 エピローグ
もちろん、世間にはまだ秘密の関係。
だけど、推しだった彼は、今では心晴の「恋人」になった。
推し活は夢を見るだけじゃない——
時には、本物の奇跡を呼び寄せる力にもなるのかもしれない。