2025/07/22
第1章：招かれざる死
舞台は長野県・軽井沢。避暑地として名高い町の奥に佇む洋館「雨樹荘（うじゅそう）」にて、奇妙なパーティが催されていた。主催は、資産家にして天才時計技師の和泉孝士（いずみ・たかし）。
招待されたのは、以下の6人：
• 雑誌記者の弓月茜（ゆづき・あかね）
• 弁護士の朝比奈恭介（あさひな・きょうすけ）
• 孝士の元弟子である時計職人・藤野慎吾
• 元女優・橘リリカ
• 建築家・坂井誠一
• 主催者の従兄弟・和泉亮太
雨の降る夜、和泉孝士は自室の「時計の間」にて、鍵がかけられた密室の中で死体となって発見される。
死因は毒殺。だが、外部からの侵入は不可能。密室の扉は内側から施錠されており、窓も強化ガラスで覆われている。さらに不気味なことに——部屋のすべての時計が、午後9時丁度で止まっていた。
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第2章：探偵、登場
その翌朝、館を訪れたのは、京都出身の探偵・真堂真白（しんどう・ましろ）。彼女はかつて被害者に機械仕掛けの推理道具を依頼されたことがあり、今回の事件にも関心を持ったのだった。
真白はそれぞれの事情を探るうち、次の事実を突き止める：
• 和泉亮太は、遺産相続を巡って過去に孝士と揉めていた
• 藤野慎吾は、弟子時代に時計の設計図を巡って孝士と決裂
• 弓月茜は、孝士の発明に疑惑を持ち取材目的で参加
• 朝比奈恭介は、孝士が巻き込まれた過去の裁判の担当弁護士
• 橘リリカは、孝士から資金援助を受けていたが、最近は断られていた
• 坂井誠一は、館の設計者にして、この密室の仕組みを唯一知る人物
全員に動機がある。そして、誰もが殺人時刻には「それなりのアリバイ」があると言う。
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第3章：死者からのメッセージ
真白は「時計の間」の構造に着目。時計がすべて同じ時間で止まっていたのは、誰かが故意に時計のゼンマイを抜いた可能性を示唆していた。さらに、机の裏から奇妙なメモが見つかる：
「時間が動かないなら、真実も止まる。過去に裏切られたのは、現在の復讐に値するのか？」
その筆跡は、坂井誠一と一致。
そして、館の地下の時計工房から「一台の機械式タイマー」が見つかる。毒物と連動しており、ある時刻になると飲料に微量の毒を混ぜる仕組みが判明。
犯人は、毒をセットしたのち、時間差で被害者がそれを飲むように仕向けていた——すなわち「現場に居なかった」人物こそが真犯人である可能性が高まった。
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第4章：密室のトリック
真白は気づく。「密室を作ったのは、誰でもなく建物そのもの」だった。
坂井が設計したこの館には「外から施錠したように見せかける構造」が備わっていた。鍵穴とドア枠が特殊な仕組みで繋がっており、長さを調節できる金属棒を用いると、外から鍵を締めたように錯覚できる。
また、時計が止まっていたのは、犯行時間に注意を向けさせるトリックだった。
犯人は巧妙にタイマーを使い、部屋を密室に見せかけ、自身の不在を証明しようとしたのだ。
そして——真白は皆の前で犯人の名を告げる。
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第5章：逮捕の瞬間
犯人は、意外にも弁護士・朝比奈恭介だった。
動機は「復讐」だった。
孝士が過去に巻き込まれた裁判にて、朝比奈は不正を暴かれ弁護士生命を一度絶たれていた。
その裁判の記録を孝士は時計の中に隠していた。
朝比奈はそれを奪い、抹消するために殺害を決意。
毒物の仕込みは、彼の法律知識を駆使した完璧な時間管理。密室の構造も、坂井に依頼された設計図を事前に入手していたのだった。
真白の推理により、証拠は揃い、朝比奈は逮捕される。
彼が最後に漏らした言葉は——
「時計は止まったが、俺の憎しみは止まらなかった」
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🔚 エピローグ
事件から数週間後、雨樹荘は一般公開を終え、静寂に包まれていた。
真白は、孝士の設計した時計のひとつを修理しながら、呟く。
「密室を破るには、鍵じゃなく、心に潜む闇を見なきゃいけないんだね」
そして時計は再び動き出す——未来へ向けて。
