2025/07/22

**第一章:幼き日々**
春の陽射しが差し込む公園。風がそよぎ、ブランコの鎖が軋む音が響く。
「ほら、もっと押して!」
「しょうがないなぁ。ほら、いくぞ!」
幼い頃の和真と紗菜は、いつも一緒にいた。家が隣同士で、朝から晩まで遊びまわった。どちらかが悲しむと、もう片方がすぐに駆けつける。そんな日々が、何よりも心地よかった。
しかし、時が経ち、二人は別々の大学へ進学することになった。最初は頻繁に連絡を取り合ったが、次第に忙しさに追われ、話す機会が減っていった。
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**第二章:すれ違いの日々**
「最近、紗菜と話してないな…」
大学生活が始まり、和真は独り暮らしを始めた。自由になったはずなのに、どこか心にぽっかりと穴が空いたような感覚があった。
紗菜もまた、キャンパスでの新しい出会いと学業に追われていたが、ふとした瞬間に和真のことを思い出していた。けれど、今さら「会いたい」とは言い出せなかった。
それぞれの生活は違う方向へ進んでいたが、どこか心の片隅にはお互いの存在が残っていた。
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**第三章:再会**
「えっ……和真?」
社会人になり、紗菜は会社帰りにふらりと立ち寄ったカフェで、見覚えのある後ろ姿を見つけた。
「紗菜……久しぶりだな!」
偶然の再会だった。ぎこちない空気はすぐに溶け、二人は昔話に花を咲かせた。楽しかった日々、くだらない話、そして、別々の道を歩んできた時間のこと――。
その日を境に、二人は少しずつ連絡を取るようになった。たまに食事へ行ったり、仕事の愚痴を言い合ったり。昔のように、一緒にいる時間が増えていった。
しかし、どこかぎこちない。それは、お互いに特別な感情を抱きながらも、それを言い出せないまま過ごしていたからだった。
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**第四章:募る想い**
「また来週、時間ある?」
「うん、楽しみにしてる」
何度も会って、何度も楽しい時間を過ごしているのに、その一歩を踏み出せない。どこかで「言葉にしてしまえば、今の関係が壊れるかもしれない」という不安があった。
そうして、同じような日々を過ごしていたある日、紗菜が軽く言った。
「いつもありがとうね。和真と話してると、なんか安心するんだ」
その言葉が、和真の背中を押した。
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**第五章:想いを伝える日**
春の風が吹く夜。ライトアップされた河川敷を二人で歩く。ふと立ち止まり、和真は紗菜を見つめた。
「紗菜、俺……ずっと、お前のことが好きだった」
紗菜は驚いた表情を浮かべた。けれど、次の瞬間、ゆっくりと微笑んだ。
「……私も。ずっと、和真のことが好きだった」
どちらも同じ気持ちだった。すれ違い、距離ができ、それでもお互いの中にずっと存在し続けていた想い。
夜の風に包まれながら、二人は初めて、素直な気持ちで向き合った。
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**エピローグ**
「なんだか、不思議だね」
「うん、まるでずっとこうなることが決まっていたみたい」
幼い頃、何も考えずに手を握っていた二人。
今度は、その手をしっかりと握りしめ、歩き出した。