2025/07/22

**第一章 出会いの夏**
蝉の声が響き渡る、暑い夏の日。
葵(あおい)はバスの窓から、緑が広がる山々を眺めていた。
「いよいよ合宿か……」
大学のスポーツサークルに所属している葵は、今年の夏合宿に初めて参加することになっていた。
目的地は、海に近い小さな山村の宿泊施設。
「葵、緊張してる?」
隣の席の涼太(りょうた)が、軽く笑いながら話しかけてくる。
「そりゃまあ、初めてだし……」
「大丈夫。みんな優しいし、すぐ慣れるよ」
そう言いながら、涼太は窓の外を見つめた。
彼とは特に親しいわけではなかったが、なぜか話していると落ち着く気がする。
この夏合宿が、ただの思い出ではなくなるなんて、葵はまだ知らなかった——。
—
**第二章 ひと夏の輝き**
合宿初日、猛練習を終えた後、みんなで海へ遊びに行った。
「涼太、泳ぎ得意?」
「まあね。でも、泳ぐよりこうして眺めてるほうが好きかな」
波打ち際で座りながら、涼太はふと呟いた。
夕焼けが海に映り込み、風が心地よく吹き抜ける。
「こういう瞬間って、ずっと覚えていたくなるよな」
葵はその言葉を聞いて、ふと彼を見つめた。
「……そうだね」
心の奥が、静かに揺れる。
—
**第三章 夜の告白**
合宿最終日の夜、みんなでキャンプファイヤーを囲んでいた。
焚き火の灯りが揺れ、笑い声が響く。
しかし、葵はふと涼太の姿を探した。
「どこ行ったんだろう……」
宿の裏手に足を運ぶと、そこにはひとり静かに座る涼太の姿があった。
「……ひとり?」
「ああ、ちょっと涼みにね」
葵は隣に座り、静かな夜の空気を感じた。
「この合宿、どうだった?」
「楽しかった。……でも、多分、涼太がいたから特別だったのかも」
涼太は少し驚いたように目を向ける。
「俺も……葵と過ごす時間、特別だって思ってた」
その言葉に、葵はそっと微笑む。
「また、こういう時間を過ごせたらいいな」
「うん……絶対、また会おう」
キャンプファイヤーの灯りが、まるで二人の心を照らしているようだった。
夏の夜に交わされた約束——それは、ひと夏の思い出ではなく、未来へ続くものだった。