2025/07/22

**第五章:執事の告白**
村上執事は警察に拘束され、長谷川刑事の尋問が始まった。
「村上、お前が黒崎貴一を殺した理由を話せ。」
村上は静かに息を吐き、ゆっくりと口を開いた。
「黒崎様は…私の家族を破滅させたのです。」
全員が息を呑んだ。
「私の父は、かつて黒崎様の事業の共同経営者でした。しかし、黒崎様は父を裏切り、会社を乗っ取りました。その結果、父はすべてを失い、失意のうちに亡くなったのです。」
村上の目には怒りと悲しみが宿っていた。
「私はずっと復讐の機会を狙っていました。そして、黒崎様が『秘密を話す』と言ったとき、それが私の父に関することだと確信したのです。もし真実が明かされれば、私は父の名誉を取り戻せるかもしれない。しかし、黒崎様はそれを話す前に殺されるべきだと考えました。」
「だから、隠し扉を使って密室を偽装し、黒崎を殺したのか?」長谷川刑事が鋭く尋ねる。
村上は静かに頷いた。
「ええ。しかし、私は後悔しています。父の名誉を守るために、私は罪を犯してしまった。」
**第六章:遺された秘密**
村上の供述により事件は解決したかに思えた。しかし、美咲は何か違和感を覚えていた。
「黒崎さんが話そうとしていた秘密は、本当に村上さんの父のことだったの?」
長谷川刑事は黒崎の書斎を調査し、ある封筒を見つけた。そこには黒崎が書いた手紙が入っていた。
**『私は長年、ある秘密を隠してきた。しかし、今夜すべてを話すつもりだ。私の財産は、ある人物に譲るべきだと考えている。』**
「財産を譲る?」桐生が驚いた。
「誰に?」玲奈が尋ねる。
長谷川刑事は手紙の最後の部分を読み上げた。
**『私の財産は、村上に譲る。彼の父を裏切ったことを後悔している。私は償いたい。』**
村上はその言葉を聞き、愕然とした。
「黒崎様は…私に財産を譲るつもりだった?」
「そうだ。」長谷川刑事は静かに言った。「つまり、君は復讐のために殺したが、実は黒崎は君に償おうとしていたんだ。」
村上は震えながら床に膝をついた。
「私は…なんてことを…。」
**第七章:霧の晴れた朝**
事件が解決し、村上は逮捕された。しかし、黒崎の遺言により、彼の財産の一部は村上の家族に譲られることになった。
「黒崎さんは最後に償おうとしていたのね。」美咲は静かに呟いた。
「皮肉な話だな。」藤堂がため息をついた。「もし村上が殺さなければ、彼はすべてを手に入れていたのに。」
朝になり、霧の館の周囲に立ち込めていた霧が晴れ始めた。
「これで事件は終わりね。」玲奈が言った。
「いや、終わりじゃない。」美咲は微笑んだ。「これは新しい物語の始まりよ。」
霧の館に漂っていた謎は解けた。しかし、人の心に潜む闇は、まだ霧の中に隠れているのかもしれない。